「吉原」と聞いて皆さんはどんなイメージを持つだろうか。
少なくとも男性は、ほぼ全員が同じイメージを持っていると言っても過言ではないだろう。
そう、吉原は江戸時代には吉原遊郭として栄え、今でも一大ソープランド街として名を馳せている街である。
吉原の街を歩くと右を向いても左を向いてもその手のお店がひしめき合っているが、エロに惑わされることなく街をよく見るとその他にも目立つものに気がつく。
次の写真を見てほしい。
一見、なんの変哲もない古い建物が立ち並ぶ写真だが、その屋根を見るとどの建物にも共通して取り付けられているものがある。それが給水タンクだ。
ソープランドのサービス内容を考えれば当たり前だが、どのお店でもお湯を大量に使用するために屋上に給水タンクが備え付けられているのだ。
そういうお店に限らず、学校や公民館などの大勢で使用する建物やアパート、あとは降水量の少ない沖縄では一般家庭の民家にも取り付けられていることが多い。
だが、吉原が特殊なのは、吉原という限られた一角だけ突然給水タンクが群生していること、また低層の建物が多いため地上から観察できる給水タンクが多いことである。吉原遊郭の名残できっちりと区画整理されているため道から建物を見やすいことも給水タンクを見るにはもってこいだ。雑居ビルが所狭しと立ち並ぶ場所ではこうは行かないだろう。
それで、この給水タンクがとても良い。ビルの上にちょこんと乗ったその姿は可愛らしいし、ひとつひとつに個性があってまさに女の子を比べるように比較できるのも楽しい。何よりお金がかからない。諭吉先生が一度に何人も消えていく建物の屋上にこんな無料の娯楽が隠れていた。
というわけで、ここからは僕がグッときた給水タンクを紹介していきたい。
①物思いにふける黄昏タンク
まずはスタンダードな円柱タイプの給水タンク。広めの屋上にちょこんと乗っかった姿はまるでパトランプのようでもあり、何かのボタンのようでもあり、控えめなサイズ感がかわいい。
また、下にのびたパイプが給水タンクの足だと思ってみると、屋上の端に腰掛けて物思いにふけっているようにも見えてくる。建物の中で繰り広げられる行為の直下で給水タンクは一人なにを思うのだろうか。
②仲良く並んだ双子タンク
次は横ならびに綺麗に並んだ双子の給水タンクである。給水タンクは底面から水を送り出す構造のものはこの写真のように台の上に載せる必要があるのだが、この台も双子タンクのために設えられていて、このタンクたちが大切にされている感じが伝わってくる。
ところで2つのタンクが備わっているということは、このお店はお湯の使用量が多い、つまりお客さんのたくさん入る人気店! …なのかどうかは分からないが、「給水タンクみて来ました」は一度は言ってみたいセリフである。
それと、こちらの写真もみていただきたい。
この写真も双子タンクなのだが、その脇に立っている換気塔も2本揃っており、かなりのコンビネーションの良さを見せている。フィギュアスケートで言えばトリプルアクセルダブルトゥーループぐらいのコンビネーションである。
そして換気塔の上部が図らずとも「H」の形をしており、Hなお店であることを人知れずお知らせしてくれていた。この換気塔も給水タンクと合わせてぜひチェックしてほしい。
③男女受けナンバーワン!?丸型タンク
丸型の給水タンクは、どうみてもドラゴンボールでベジータが地球にきた時に乗っていた宇宙船にしか見えない。サイヤ人も吉原に遊びにきていることを考えると、日本のエロが世界にとどまらず宇宙を救っているとも言えて感慨深い(深くない)。
宇宙船っぽいSF感に胸を躍らせるのは男性目線だと思うが、女性目線でもこのコロッとしたフォルムは給水タンクの中でも一番キュートに感じるのではないだろうか。男性受けも女性受けも良い丸型は、給水タンク界のアイドル的存在なのかもしれない。
④かけ離れた世界を繋ぐ、まるとしかくタンク
先ほど紹介したキュートな印象を与える丸型とは反対に角ばって無骨な印象を与えるのが四角型の給水タンクである。しかしこの丸型と四角型が同じ画面に収まると、少しデザインっぽさがでてはこないだろうか。どう説明していいかわからないのだが、丸と四角が並ぶことで形をより強く認識することになり、なんというか、ただの形に意味が付加されたような気がしてくる。
と思って探したら、教育テレビでやっている「デザインあ」という番組の「まるとしかく」というコーナーがまさにこの2つの給水タンクである。以前、この番組をテーマにした「デザインあ展」という展覧会に行って、そこで流れていたその名も「まるとしかく」という曲にハマったことを思い出した。ちなみにこの曲。
ソープランドとNHKという一生交わることのなかったであろう両者が、給水タンクを通して奇跡的に出会いを果たした瞬間である。
⑤圧巻!吉原名物群生タンク
最後に紹介するのがこちらの写真である
ここまで読まれた方はもう給水タンクしか目に入らなくなっているに違いないので、画面を埋め尽くさんばかりの給水タンクに興奮を隠しきれないのではないだろうか。
落ち着いて給水タンクの数を数えてみよう。
なんと1つの写真の中に給水タンクが8個も写っている。これは小さなビルにもほとんど給水タンクがついており、かつ低層の建物が集まっている吉原だからこそ見られる貴重な光景なのだ。「吉原遊郭の町割りと給水タンク群」という名前で世界遺産に登録されてもよいくらいである。
ここまで僕のお気に入り給水タンクを紹介してきたが、最後にそれ以外の給水タンクも含めて1枚の画像にまとめて好きな給水タンクを選びやすくしてみた。
いかがだろうか。どうみてもただのベッヒャー夫妻だ。
いつも友達とは好きなアイドルの話ばかりで飽きてきた。。。そんな人にはぜひ推し給水タンクの話で盛り上がっていただきたい。さぁ、あなたの“推しタン”は一体どれ?