30歳で「普通の人生」について思うこと

2022年でついに30歳を迎えた。同時に4月からは会社で課長という責務を与えられ、日々”中間”を必死に管理している。次長課長もびっくりの怒涛の中間管理職である。(エンタの神様での次長課長のキャッチコピーが「怒涛の中間管理職」であったことをどれだけの人が記憶しているだろうか、不安なので元ネタを書いてしまった。)

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年末年始は特に帰る実家もないので家でのんびり過ごしているわけだが、年末恒例のドキュメント72時間特番(2022年放送分から視聴者投票でTOP10に輝いた10本を放送する)は毎年録画して見ている。

とりあえずTOP3は視聴したが、こどもパーク、看護専門学校、巨大模型店とどれも面白かった。72時間という時間の制約があり、その場から特定の人を追いかけて深入りするわけでなく、あくまで時間と場所が限定された中で様々な人々の生き方を垣間見させてくれるこのドキュメントのフォーマットはなかなか秀逸だ。

特に巨大模型店は境遇の異なる様々な人が模型という共通項だけで集まってくるので色々な人がいて面白い。社会人の息子に頼まれて自分は一切やらないのに、ガンプラの発売日にキャラクターの写真と名前が書かれた紙を握りしめて模型店にやってくる70歳過ぎのお爺さんは、3時間待ったのにその日は目当てのプラモデルが買えず、また明日来ると言っていた。社会人にもなって70歳過ぎの父親を模型店に駆り出す息子に軽い憤りを抱きつつも、この模型購入が親子のつながりを作っているのであればそれはそれでいいかとも思う。このお父さんを追いかけず店の前で見送るこの構成が、想いを巡らせる余白があって良いのだ。

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総合商社の伊藤忠商事が発行している『星の商人』という季刊誌がある。

この『星の商人』の中の、世界中の駐在員がそれぞれの駐在地の魅力を紹介する「駐在員の旅案内」という連載だけを集めた『旅する星の商人』というオムニバス盤が先日発行されたので取り寄せて読んでみた。もちろん無料だが200ページ近いしっかりとした本になっており、伊藤忠のさすがの大企業っぷりも堪能できる一冊だ。巻頭エッセイが吉田修一の書き下ろしってマジかよ。

装丁もしっかりしていて社内報の趣ではない

ちゃんと書かれてる吉田修一の巻頭エッセイ

各都市の観光案内を書いているのは伊藤忠の社員なので特に文才を感じる文章ではないのだが、こちらもドキュメント72時間同様に、観光案内に挟まれる個人的なエピソードが面白い。欧州駐在歴20年の社員が年に一度だけ決まったお店でポール・スミスさんと会って家族の話をして1時間ほどで別れる話とか、気になりすぎるでしょ。七夕の織姫と彦星か?

個人的にはベトナム駐在社員が紹介していたブンチャーが一番気になった。めっちゃ美味そう。

あとこの本はあくまで社内報という位置付けなので、どの社員もその都市で自分がどういう仕事をしていてどのように仕事を発展させていきたいかみたいなことを簡単に最後に書いていてこれがまた良い。それまで観光案内を通して街の良さを語ってきて最後にグッとビジネスの話に落ちる流れに、生々しい人っぽさというか、仕事も趣味も結局は一人の人生である感じが表れていて、すごく面白い。有名社長とかではない一般のビジネスマンが書いた、仕事と私生活のハイブリッド読み物ってなかなか読めないので貴重だと思う。

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ドキュメント72時間と伊藤忠の季刊誌について書いたが、こういう、別に有名ではない人のエピソードや人生に触れるようなことにだんだん心が惹かれるようになってきていると感じる。

というのも、結局仕事も人の人生の積み重ねなんだなぁと思うことが増えたからだろう。

もっと若い頃は仕事というのは多くの人の頑張りによって支えられていて、大きな仕事は何か捉えようのない、自分ではどうすることもできない何かによって動かされているような感じをどこかで感じていた。

ただ社会人歴も8年目をむかえ、どんな仕事も、もちろん多くの人の頑張りによって支えられてるものではあるが、結局そこにあるのは誰かが決めたことの結果であることに気がつき始めた。大きな仕事はそれだけ多くの人の、もしくは偉い人の決定がそこにあるだけだ。

つまりは、世の中のために〜とか、人として〜とか、いくら大層なことを言ったとしても、最後にものごとを決めるのは、決定権者その人の考え方であり、生き様なのだ。

どこかの誰かの、特に世間に対して大っぴらになることもない膨大な人生が世の中を動かしていると思うと、ひとつひとつは些末と言っていい誰かの個人的なエピソードに心惹かれてしまうのだ。

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もう少しいうと、今年から課長になりチームメンバーのマネジメント業務をしなければいけなくなったことも関係があるかもしれない。

はじめてのマネジメントや組織づくりは慣れないことも多く難しいなぁと思うことばかりの一年だったが、それ以上に思うのは「いろんな人がいるなぁ」である。

いや、世の中にいろんなタイプの人間がいることはこれまでも散々実感してきているのだが、リーダーとしてキャリアプラン云々という話をするとなると各メンバーを点としての個性というより、生き様として見るというような感覚になるのだ。そういう意味では「いろんな人がいるなぁ」よりも「いろんな人生があるなぁ」の方が正しいかもしれない。

チームメンバーの人生は、語弊を恐れずいえば、”THE 一般人の人生”である。でもそれがその人を形作り、ひいてはこのチームを形作っているのである。だからもっとメンバーの些細な出来事を気軽に話してもらいたいし、俺も話していきたいと思う。血の通ったマネジメントとは結局そういうところなのかなと感じている。

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30歳という節目なので思ったことを簡単にまとめておこうと思ったのだが長くなりすぎたし、最後は超真面目な仕事観になってしまった。

でも仕事云々抜きにして、人の人生って面白いと思う。ただ成功者の特別なエピソードばかりではつまらない。もっとその辺りにたくさん転がっていて、でも見比べるとちょっと周りよりも綺麗じゃん?という小石みたいなエピソードにときめける40歳を目指して今年も頑張ります。(まずは目の前の”中間”をちゃんと管理できるようにしよう)

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