ずっと「さいたま新都心」が気になっている。
小さい頃にはなかったはずだが、いつしか駅まで出来て新しい都心を名乗っている。
しかしすぐ隣には埼玉が誇る都心、大宮があるため、大抵のことは大宮で事足りてしまうだろう。みんなさいたま新都心で何をしているのか。
よく考えてみたら今までさいたま新都心に行く用事は1つしかなかった。
そう、音楽ライブや大型イベントでお馴染みのさいたまスーパーアリーナである。
さいたまスーパーアリーナへ行く用事以外でさいたま新都心に訪れたことのない人はかなり多いのではないだろうか。
この新都心には他に一体何があるのか、そもそもどこまでが、なにが新都心なのか、今回はそんなことを確かめてきた。
新都心と大宮の攻防
さいたま新都心駅の改札を出ると、大屋根に覆われたコンコースが現れる。
さいたま新都心以外でも、横浜のみなとみらいや千葉の幕張など新都心と呼ばれる場所にはこういう屋根付きのコンコースがあるイメージがあるが、新都心界の暗黙のルールなのだろうか。
さて、さいたまスーパーアリーナに行くときには改札を出て左に曲がるが、ここを右に曲がってみよう。今日はさいたま新都心駅の改札を出て初めて右に曲がった記念日である。
すると早速、さいたま新都心の地図が掲示されていた。
これを見ればさいたま新都心に何があるのか一目瞭然だ。どうやらさいたま新都心にあるのはさいたまスーパーアリーナ以外に、合同庁舎、郵便関係の施設、あとはコクーンというエリアくらいらしい。思っていたよりもコンパクトシティだが、街全体のカタチがかなりおかしなことになっている。枝の間にいるサナギにしか見えない。この街、いつか蝶になって街全体が飛んだりするんじゃないのか。
早々にさいたま新都心に何があるのかは分かってしまったが、実際に歩いて見なければさいたま新都心の真の姿を知ることはできない。まずは駅から大宮方面を目指そう。
ちなみに先程の地図でアーバンと書かれたエリアには、ヨドバシカメラや飲食店など様々な専門店が集まっている。まさにアーバン=都会というド直球なネーミングに相応しい実用性の高いエリアである。
そんなアーバンを横目に、さいたま新都心の一番大宮寄りの場所までやってきた。
早速、さいたま新都心と大宮の境界をご覧いただこう。(GIFで動きます)
先ほど紹介したアーバンエリアの終わるところと道を隔てて住宅街が広がる部分が新都心とそうじゃない部分の境目である。土地の使われ方が大きく違い、境界が分かりやすい。ただ、この住宅街もきれいな戸建てが多く、新都心の開発に合わせて出来たような雰囲気である。少なからず新都心の影響を受けているのだろう。
さらに、足元に目を向けるとここにも分かりやすく境目があった。
タイルの種類が違っている。RPGで言えばBGMが切り替わる瞬間である。
こんなに分かりやすく新都心じゃないエリアが始まっているにも関わらず、写真に写っているレンタカー屋とその先のオレンジの看板のだんご屋はどちらも「さいたま新都心店」を名乗っており、大宮とさいたま新都心のせめぎ合いを見ることができるポイントでもある。
さいたま新都心にはなれない存在
この境界の真上にかかるほこすぎ橋を渡り、線路を挟んで反対側にくるとそこには大きな建物が立っている。
これはさいたま新都心地域冷暖房センターといってさいたまスーパーアリーナを始めとしたさいたま新都心内の各施設の冷暖房システムを管理している施設である。
こういう各施設のシステムを1箇所で一元管理しているというのはすごく新都心っぽい。さいたま新都心における暑さや寒さの全てはこの施設に一任されているのだ。ここの職員が暴走したら、さいたま新都心だけデイ・アフター・トゥモロー状態になってしまうかもしれないと考えると、近未来感が半端ではない。さいたま新都心の新都心らしさを語る上では外せない施設である。
そんな冷暖房センターを横目に、さいたま新都心駅方面に戻っていこう。
こちら側の境目はしばらくは新幹線と埼京線の高架に沿っているが、さいたま新都心駅付近までくるとこの高架は別の方向へと大きく曲がっていく。
このあたりはこんな感じで境界が分かれている。
先ほどのほこすぎ橋のあたりもそうだったが、陸橋を境にして新都心とそうじゃない地域が分かれている場合が多い。橋を渡ると新都心に入れるようにしてあるのも新都心っぽさを出す演出なのかもしれない。
そして同じ場所で振り返ると、
左手にはさいたま赤十字病院、右手にはこちらにも新都心っぽい建物が建っている。しかし、さいたま新都心エリアは道路よりも左側だけである。新都心エリアからは外れているものの、なんとかして新都心の仲間入りをしたい…そんな想いがひしひしと伝わってくる右側は「新都心になりたい」エリアとしておこう。
ちなみにこの建物は「シティテラスさいたま新都心」という名前のマンションで新都心に取り入ろうと必死だ。
もう少し先に進んで建物の端までくると、その裏には空き地や何の変哲もない住宅街が広がっており、新都心になりたくてもなれないシティテラスさいたま新都心の悲しい現実が目に入る。これが新都心とそうじゃない場所との「差」なのだ。
ここまでさいたま新都心の輪郭を見てきたが、そもそもさいたま新都心はなぜサナギのような不思議な形をしているのだろうか。
それはさいたま新都心がもともと国鉄の大宮操車場があった場所に作られたからだ。
線路に寄り添うようにあった操車場を再開発したため、さいたま新都心は駅の周りにサナギのように広がっているのである。
まだまだある、新都心らしさ
さいたま新都心の成り立ちもわかったところで、境界巡りを続けていこう。
新都心になりたくてしょうがないシティテラスを過ぎると、ここが埼玉県の一部であることを実感できる場所にでる。
パノラマで写真を撮ると、左手には新都心の近代的な建物、右手には瓦屋根の民家があり、新都心とそうじゃないエリアの対比がくっきりだ。そして新都心とはいうものの、ここは埼玉なんだと思い出させてくれる。ここはさいたま新都心の新都心っぽさとさいたまっぽさを同時に感じることのできるベストビュースポットなのだ。
また、新都心には近代的な建物以外にも特徴的なオブジェもある。
階段に白波が立ったようなオブジェ
赤くてウネウネした謎のオブジェ。設置されているのは郵便局の前なので個人的にはこれはポストのバケモノなんじゃないかと思っている。
そして、さらに新都心を感じさせるのが、
南国っぽい木だ。
近代的な街並みに謎のオブジェと南国っぽい木が加われば誰もが新都心と認めざるを得ないだろう。さいたま新都心は三拍子そろった正真正銘の新都心なのである。
なんてことを思いながら、いよいよさいたま新都心の端っこまでやってきた。
ここまでくるとさいたま新都心の隣駅の北与野の方が近い。
さいたま新都心の一番端っこにあるのは郵政庁舎だ。その前の道路を境にさいたま新都心は終わっている。
というわけで、ほぼグルッとさいたま新都心を見てきたが、これまで知らないさいたま新都心の姿をたくさん見ることができた。そしてさいたま新都心が新都心である所以もいたるところで感じることができた。やはりさいたまスーパーアリーナだけでは語ることの出来ない魅了がさいたま新都心にはあった。
最端に位置する郵政庁舎の前にあるまっすぐに伸びたこのオブジェはどことなく船の先端のような雰囲気を出している。
そう考えるとさいたま新都心全体が船の甲板のようにも見えてくる。海のない埼玉県でさいたま新都心は次世代を目指して航海を続けているのかもしれない。
いつかさいたま新都心が海を見つけるまで、見守っていきたい。