4月といえば健康診断の季節だ。
振り返ってみれば小学生の頃から毎年春には健康診断があり、身長体重の増減に一喜一憂してきた。尿検査やぎょう虫検査のドキドキは今でも感じてしまう。
しかし健康診断にワクワク感を覚えるのは学生時代くらいではないだろうか。社会人になっても毎年健康診断はあるだろうが、それは病気があるかないかを確かめることが主な目的になっているから学生時代に抱いた健康診断への想いとは違ったものだろう。
そんな学生時代の健康診断も今年が最後である。悔いの残らない健康診断にしなければならない。
ところで俺はいつも身長を聞かれると168cmと言っている。確かに高校3年生の時の健康診断で167.8cmくらいを記録したので四捨五入して168cmは許容範囲であろう。
しかし大学に入り俺の身長は168cmとは言えない状況に陥っている。167cm代前半ならまだしも去年はついに166.8cmを記録してしまった。さすがに168cmと言い張るのはおこがましいくらいだ。深夜バイト明けで健康診断へ行ったので「ずっと立ってたから重力のせいで…」と苦しい言い訳をしてしまった。
仮にも俺は都会のど真ん中にあるオシャレ大学に通う大学生である。このまま身長が低くなり続けることはどうしても止めなければいけない。しかも今年は学生時代最後の健康診断である。有終の美ってやつを飾らなければいけない。
どうすれば身長を維持することが出来るのか…
そう思ってふと机を見ると…
ん?あれは…?
紙粘土だ。こんなに都合よく机の上に紙粘土が置いてあるものだろうか。これは神(紙)のご加護としか思えない。
そして身長に必要なものと言えば「かかと」だ。西洋では悪魔にはかかとはないとされている。人間といえばかかとなのだ。ちなみにこれを思いついた時点で夜中の4時半なのであまり深いところまで突っ込まないでほしい。何はともあれ「かかと」なのだ。
というわけで早速かかとを作ってみた。
まずは造形である。少し昔の紙粘土なので硬くなっていてなかなか思ったような形にするのが大変だ。
とりあえずこんなもんでいいだろう。
本当は丸一日天日干しにしなければいけないのだが、そんなに待っている余裕はないのでドライヤーで一気に乾かす。現代人にとって時間は貴重なのだ。
そして着色したものがこちら。これを見て「かかと」と答えられる人がいたら俺は尊敬する。勝手にかかと大使に任命したい。
しっかり内側も着色してある。
人体の一部を創るということは生半可な気持ちでやってはいけない。見えないからといって手を抜けば後から欠陥が出てくるものなのだ。
装着するとこんな感じだ。
思ったよりもかかとになった。
世間ではSTAP細胞の真偽が追求されているが、人体の創造というのはそんなに難しいことではないのではないだろうか。小保方さんも難しいことを考えずにかかと作っとけば幸せになれるだろう。
というわけでかかとなので二つ作った。
誰になんと言われてもこれはかかとである。
かかとかかとかかとかかとかかとかかと
そろそろかかとに見えてきただろうか。
作成が終わった時点で5時半。もう朝だ。これが巷で噂の「かかと作りオール」ってやつか。
あまり寝る間もなく実際にかかとを装着して健康診断へと向かった。
装着は輪ゴムで。結局上から靴下を履いてしまうので見た目はほとんどわからない。
ドキドキしながら健康診断へと向かう。言ってしまえばこれは不正な気もするがあくまでもかかとを拡張しただけなので問題ないということにしたい。むしろ人体錬成という禁忌を犯している疑惑の方が問題である。
いよいよ身長の測定だ。
緊張してオン・ザ・身長計する。
そっと測定機器が頭に載せられ身長が測られる。
気になる学生時代最後の身長は…
167cmジャスト
なんとも言えない結果に言葉が出なかった。去年より0.2cm伸びているとは言え紛れも無く167cmという数字が出てしまった。これからは身長を聞かれたら167cmと答えなければならない。俺も男だ。甘んじて現実を受け入れたい。
健康診断のあとにかかとを取り出してみると粉々になっていた。
やはり人体錬成は簡単に出来るものではなかった。今ならば小保方さんの気持ちも分かるってものだ。STAP細胞を創るのは大変だ。
というわけで学生時代最後の健康診断は自分なりに楽しめた。今年から大学生になる一年生もあっという間に学生生活は終わる。どうかやり残すことのないように4年間を満喫してほしい。